昇華する精霊たち/within
 
 安寧を揺るがすのは憂鬱。それなら感覚を切断せよ。明るみに目を塞がれ視界が消える。唇から血がしたたる。野獣のような目つきで、鋼鉄に潰されようと、立ち止まらない。ソウ、彼はゆく者、帰る者ではナイ。夜、目深にかぶった帽子の下で画策する。Future そして、Figure. 忘れられた名前は、どこで消失したのか。それさえもが枝先の芽を撫でる。

 息の上がった走者は、走ることをやめられず、ひたすらランナーズハイを追い求める。赤い風が黄色い風を押し返す。石畳の通りは建物と建物の間に蜘蛛の巣を張るように伸びている。立ち止まらずに走り続ける。ゴールなんてない。行方知れずの父親のようにこのまま蒸発してしまお
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