卵の音 /服部 剛
 
ず茶を 
クリームソーダを 
ブレンド珈琲を 
それぞれに啜りつつ 

古事記について 
明治維新について 
戦後について 
心の病んだこの国について 
そしてPoetryについて 
3時間の穏やかな討議をした 

  * 

額縁のモーツァルトは 
思案げに俯いていた―― 

  * 

「はっとりん、俺等は歩いていくよ」 

「麦」を出て、地上にあがった 
丸の内線の改札で 
詩友FとRとがっしり握手して 
静かな魂の震えるままに 
稲穂になった僕は頭を垂れた―― 

ふたりの背中が薄闇に、遠のいていった 
僕は改札の中へ、入った 

  * 

ホームに滑りこんできた 
地下鉄のドアがゆっくり、閉まる。 

世界の何処からか 
あたらしい卵の割れる音が、聴こえた 







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