白い糸くずの群れ。/元親 ミッド
ガラスいっぱいに広がる黒に、
顔を寄せすぎるほどよせて、おさなごがさけんだ。
ねぇとおちゃん!
なんだい、坊?
問いかけられた髭面の男は
グラスの琥珀を半分ほど飲みほして
おさなごの方を見た。
とおちゃん、あれなんなん?
あれ?
男が窓の外に目をやると
深い暗闇のところどころで
点々と生き残った街灯の下に
何やら白い、短い糸くずのようなものが
群れたり寄ったりしているのが見えた。
それをしばらく眺めていると
おさなごは、男の方を振り返り
あのしろいのなんなん?と、
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