エッセイ ハエを逃がしてやったこと/Lucy
寒いので今日は職場も窓を閉め切っていた。
すごく大きなハエが建物の中に入っていて、窓に向かってぶんぶんじたばた暴れ中なのをみつけた。
その真四角の窓は、太い木の枠に囲まれていて、上の部分の留め金を外すと斜めに内側に倒れる形で、少し開くようになっている。
私はハエのためにあけてやった。
その木の枠を乗り越えさえすれば、外に出られるのだ。しかしハエにはそれがわからない。
ガラスにへばりついている彼にとって、木の枠は世界の限界でしかない。とにかく目の前のガラスの向こうに、外の世界が見えるから、そこに自由があると思うものだから、ひたすら直進しようと焦るばかり。
ぶんぶんじた
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