まど・みちおに関する短い散文/……とある蛙
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古里(くに)が、母が、旗が。
すすむ、すすむ、すすむ。
前へ、闇へ、敵へ。
行き先も教えられず歩き続ける夜行軍の状況が二行ずつの連の連続によって重くのし掛かってくる詩です。夜行軍している人たちのほとんど真っ白な頭の中に浮遊している言葉の断片が詩になっているとさえ言えます。厭戦気分が横溢している詩だと言えます。
ところが、そのすぐあとまどさんは戦争協力詩を書いております。公的状況という時流に流されるぐうたらな人間であった と全詩集のあとがきで告白しています。
私には戦後五〇年も経ち、もう記憶の彼方に消えていたであろうたった二編の詩のために記念すべき全詩集のあとがきにこの事
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