まど・みちおに関する短い散文/……とある蛙
 
あたりのことは佐藤通雅さんの「詩人まど・みちお」に詳しいのですが、戦争に関して六編ほど書いており、最後二編が戦争協力詩に括られるとされています。まどさんの心の中を示していると考えられるのは、むしろ、最後の二編の直前、一九三八年に書かれた「夜行軍」という詩に現れていると考えられます。

「夜行軍」

こごる、こごる、こごる
星が、兜が、耳が、

おもる、おもる、おもる。
銃が、背嚢が、靴が。

あるく、あるく、あるく。
脚が、剣が、中隊が。

つづく、つづく、つづく。
闇が、息が、地面が。

ない、ない、ない。
声も、灯も、自分も。

みえる、みえる、みえる。
[次のページ]
戻る   Point(6)