いのちの歓び /服部 剛
 
今迄の僕は 
どれほど多くのまなざしに
みつめられてきただろう   
どれほど多くの手に 
支えられてきただろう 

今、僕は、ようやく 
幹の内側からいのちの歓びを呻(うめ)くように 
地中に根の足を張り始め 
空へ枝葉の掌をひろげ始め 
自らという樹木の内に 
脈打つ、心臓の音(ね)が 
からだの隅々を巡りゆく―― 

これからの僕を 
どれほどの雨が潤すだろう 
どれほどの陽をそそがれるだろう 

僕は伸びる、何処までも 
あの空へ
この声音(こわね)の響き渡るまで 







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