【HHM参加作品】 ビル・マックィーンの詩について。あるいは夢について。/Debby
 
読んだことがあるよ、とても良いことが書いてある本だ」と嘯いた億万長者は、執念深い捜査の手から自由になった後も順調に投資を続け、莫大な富を築き上げ、死んだ。FBIやCIAの取調べにもみくちゃにされても死ななかった男は二〇〇九年の十二月、ショットガンで自分の頭をぶち抜いた。長い銃身の先を口にくわえて、足で引き金を引いたのだ。遺書一つなかった。テーブルの上には飲みかけのハイネケンが一本あるだけだった。
 彼の墓の所在地は明らかになっていない。ただ、彼の遺産はその半分が彼の親族(老いた両親と妹だ)に、残りの半分は九・一一の跡地、グラウンド・ゼロの復興に寄付されている。だが、復興作業そのものは度重なる金融
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