【HHM参加作品】 ビル・マックィーンの詩について。あるいは夢について。/Debby
 
ビルを詩人だとは考えていないだろう。そもそも、ビルの詩のほとんどは活字になっていないし、彼が詩集を出版した事実もない。彼の知名度と反比例する形で、彼の作品はほとんど日の目を見ていない。多くの人は彼を投資家、ないしは投機家だと考えているだろうし、実際彼について語る多くの人はそのようにしてきた。
 アメリカ南部の綿花畑にぽつんと浮かぶしみったれた駅の食堂で、破れたスニーカーから親指をはみださせてベーコン・エッグを焼いていた男が、最盛期にして8億ドルという富を抱え込んだ現代の神話は彼の詩人としての側面を覆い隠してしまうのに十分だった。それが日本に翻訳されることもほとんどなかった。僕が知っている限りでは
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