木は孤独だろうか?/すみたに
 
たことがあった。上手にすいすい漕いで、ぐるぐる回って、降りれば僕を上目遣いに見つめる。私が笑顔になると、彼女もにこりと笑った。彼女がピアノ教室のために帰った後、私は一輪車に乗って彼女の残した轍を辿ろうとした。ところが急な曲線で平衡を崩し、倒れて膝を擦り剥いた。赤い血が滲み出るのをみつめる私。日が傾き、校庭には私一人しかいない。影が長く伸びた。
 木の役には基本的に練習が無い。当然である。指導があるといえば、どの場面でどこに登場するかというト書きで済む程度であったが、それでも周りの稽古に付き合わされていた。木が必要な場面ではただ舞台後方に木の張りぼてを抱え、顔だけ出して突っ立っている。成程、これは
[次のページ]
戻る   Point(0)