木は孤独だろうか?/すみたに
 
らない程の恋をしていたから、もう余程でない限り心を動かされることなどないと思っていたものだが、不意に見せる女のそういった表情が心を掴むことはありえることだ。私は彼女と同じ木の役になることに仄かな幸福を感じていただろう、あの時私は池の鯉やら校庭の桜の木や羅を矢鱈に愛でて回り、それに彼女を引き連れ、強引に手を繋いでいたのだ。鳥小屋の文鳥などには彼女の名前を覚えさせようと苦闘していたが、彼女に笑われてしまい止めたこともあった。彼女はまだ無邪気であって、そうした浪漫を理解していなかったから単純に笑っただけなのだが、私には随分冷やかに聞こえてしまい醒めてしまったのだ。
 彼女は一輪車に乗って見せてくれたこ
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