木は孤独だろうか?/すみたに
 
が教室一杯に響いた。叩かれた方も、叩いた方も泣き出してしまった。こうなると、生徒全員操縦不可能となり、教室は一変無政府状態。
 五分後には鐘が鳴り、教師は黙って出て行った。そして反って平静が突如訪れるのだ。
 その日の放課後、教師は生徒を集めて先に不可能となった調整を続行した。結果、女の一人が、翁役を男に譲ることとなり、その譲った女は木の役に回された。女の頬はもう紅くないが、眼が腫れている。私が近付いて「大丈夫か?」と声をかけたら、再び腫れぼったい眼が潤わせ、頬を紅く染めた。その可憐な表情に一瞬たじろいでしまったのは、秘めたる恋情が揺れ動いたからであろう。私はその歳にして一体何回になるか判らな
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