雪の散りまどう午后
音の波もやみ 記憶の
時の 歩みは、さかのぼる
冬のぬくもりらしきものが
わずかに溶けだして
軒下に細い指骨をつくった
一尺ほどもある氷錐(つらら)は、
きびしさを追いやる 安らぎの
澄んだ雫をおとす、
どこかで 小さな箸をおく気配があった
「「 誕生日、でしたね
「「 うん、おねえちゃん わすれてた
「「 ほんと、ごめんね
命日ばかりは けして忘れることがないのに
妹は、それでも 陽をうける氷のなかに
笑っている
冬の青天や行雲 に
常緑の命をとじこめた
氷面に すべてが濡れた、濡れるにまかせ
永い 永い 時の
心をみたすことのなかった 妹の好きだった「 Cherry 」の曲が
音色を奏でる
京年の時
心の栞は、はさまれたまま
お前の冷たい額にふれたこの指が、
氷をながれおちる 清らかな」その水滴を
手のひらに あつめる