怪奇 うさぎの大福大脱走/凪 ちひろ
母は、精神を病んだ娘が夜中に大福を放して遊んでいると思っていたらしい。
(凪は、真っ暗な部屋の中、
一人うさぎと戯れる自分を想像して背中を寒いものが走った。)
ともあれ、二回目のドライフルーツでなんとか大福捕獲に成功した。
(入った瞬間すかさずしめた。)
母は、慌ててリビングを確認したがどこにも被害は見当たらない。
安心して眠ろうとしたとき、ゲージの横の壁の角が、
縦に30cmかじられているのを発見した。
下の方は、普通にかじったのであろうが、
一番てっぺんはいくら大福が背伸びしても届く気がしない。
横にはえさ箱が置いてあった。
大福は昨夜、木組みの小屋からえさ箱に乗り移るという技を習得したばかりであった。
大福が壁紙の裏の石膏ボンドでお腹を壊さないことを願うばかりである。
ちなみに壁にできた傷をどうするかはまだ決まっていない(そのままかも)。
今日の大福はいつもより眠そうである。
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