【 おんぶ 】/泡沫恋歌
ほんの小さな子どもだった
たぶん五歳くらいだと思う
私は明確な意思を持って
嘘をついたことがある
――お母さんの背中だった
月が出ていた
星も見える
風はとても冷たい
凍てつくような冬の夜空
「もう……起きなあかんで……」
お母さんの声がした
私は寝ている振りをする
起きていると分かれば
背中から下ろされる
ここがいい!
――お母さんにしがみつく
どうして
あんなに気持ちいいんだろう
ずっと独り占めしたかった
世界で一番安らげる場所
――お母さんのおんぶ
2013/01/16
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