サラダの味 /服部 剛
 
今迄の僕は 
サラダにドレッシングを 
どばっとかけては 
じゅるじゅる汁を吸いながら 
緑の葉っぱを咀嚼(そしゃく)していた 

ある日、寄ったレストランで 
出てきたサラダの器に 
盛られた野菜は 
皿に全く汁の残らない  
ほんのりした味わいだった 

いつだか 
串田孫一がパスカルの肖像画を 
暈(ぼか)して描いた  
古い書物を閉じた後 

なにげない日々の場面に 
薄っすら金の鍵が見えるような―― 
あの読後感に似ていた 







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