ぼくは何人もの女を愛してきた/天野茂典
 
  まだぼくはほんとうに人間を愛していないのかもしれない
  ぼくはぼくのなかのぼくを愛しているだけなのかもしれない
  ぼくはひとりのナルシストなのだろうか
  ナルシストが時代の流行であった時代もあった
  アメリカの若者から伝染してもちろん日本にもやってきた
  長髪・ジーパン世代だ
  ぼくは学校の先生だったからジーパンははけても
  ロンゲにはなれなかった
  ぼくは時代の先端から弾き飛ばされてゆくような淋しさを感じた
  いまでは色あせてもうなんでもないことだが
  ぼくが退職して一番初めにしたことは長髪にすることだった
  茶髪にもした ぼくはぼくの青春を取り戻
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