あずきの恋人 (連載?)/たま
れね、鈴木さんにもらったの。魔法使いのガラス玉だって……。」
「うふっ、そうなのぉ、鈴木さんっておもしろいひとねぇ。じゃあ、そのガラス玉、あずきの絵本に使えるわね。あ……、それで、どうだったの?」
「え? なに……。」
「なにって、外山先生ことでしょう。」
「あ、外山先生はね、もう、いないんだって……。」
「えっ、どういうこと?」
「ん……、出張なの。しばらく帰ってこないそうよ。」
「ふーん、そうなの……、お仕事があったのね。」
おとうさんもときどき、出張でいなくなるから、おかあさんはなんとなく信用してくれたみたい。
あ……、よかった。
わたしは二階の部屋にあがって、鈴木さんのガラス玉を手にとって、しばらくながめていた。どこかでみかけた夜店の、輪投げの景品みたいな、ただのガラス玉だった。
だいじょうぶかなぁ、なんだかニセモノみたいだけど……。
つづく
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