マリアと犬の夜/TAT
 
な卑屈な声で応じねばならない事を知らなかった点が一つ、プレイを終えたガダル中佐の支払い伝票は四枚に分けてその内の一枚はスパーニャの切手を貼ってその日の内に郵便夫に預けねばならない事を知らなかった点が一つ)。マリアの過失は大仰にいかにも深刻に受け取られ、それに反して業績はいかにも軽んじられて蔑ろにされた。
 二一四七年式の古いホンダバルビアで弾道貫道線を駆ける帰路、マリアは転職と暴力を体現した退廃的な空想に遊び、同時に不良娘のように浅薄に憤って何かが解決する幻想に浸るのも直に止めねばならないと自分を戒めた。最後は敗北感と自己嫌悪にまみれながら絶ったはずの煙草に手が伸びる自分の意思の弱さを笑うしかな
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