春を待つ苺/石田とわ
 





      かぜは冷たく
      日のひかりも少ない中で
      みどりの葉を増やしつづける
      寒さがやわらぐころ
      真白き花を咲かせるだろう
      そして日のひかりに
      あたたかさが感じられるころ
      ちいさな実をつけるだろう
      今は固く凍ったような土から
      たくさんの栄養をもらい
      その実を赤くするのだ
      赤い実が熟したらまっさきに
      あなたに食べてもらおう
      冬の時代を、つめたい季節をたえて
      りっぱに熟した赤い実は
      あなたのなかでさらに息づくだろう
      たくさんのいのちを食べて
      わたしもあなたも生きる
      やがて大地に還るまで
      それはくり返されるのだ









戻る   Point(5)