春を待つ苺/石田とわ
かぜは冷たく
日のひかりも少ない中で
みどりの葉を増やしつづける
寒さがやわらぐころ
真白き花を咲かせるだろう
そして日のひかりに
あたたかさが感じられるころ
ちいさな実をつけるだろう
今は固く凍ったような土から
たくさんの栄養をもらい
その実を赤くするのだ
赤い実が熟したらまっさきに
あなたに食べてもらおう
冬の時代を、つめたい季節をたえて
りっぱに熟した赤い実は
あなたのなかでさらに息づくだろう
たくさんのいのちを食べて
わたしもあなたも生きる
やがて大地に還るまで
それはくり返されるのだ
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