あずきの恋人 (連載?)/たま
 

 あれっ……?
 廊下や階段に貼ってあった、青い矢印がなくなっている。一階におりると、絵本教室の立て看板もなくなって、だれかいるのかなって思って、事務所のなかを覗いたけれど、やっぱし、だれもいなかった。
「わっ、暑いわねぇ。」
 ひろい駐車場にはおかあさんの車だけがぽつんと、とめてあって、ドアをあけたら顔が焼けそうだった。
「ねぇ、あずき。これからスーパーに寄って、お買い物するからいっしょに行ってね。」
「うん……、おばあちゃんはだいじょうぶ?」
「あら、そうね……。」
 おかあさんが家に電話して、おばあちゃんが元気そうだったから、このまま買い物に行くことになった。動きはじめた車の窓ガラスをいっぱいにあけて、わたしは猫又木山文化会館の三階をみあげたの。

 あっ、だれかいる……、鈴木さん?

 たしかに、三階の廊下の窓にだれかがいて、こちらをみていたけれど、すぐに、わたしの視界からみえなくなった。                  


                      つづく













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