12/30/はるな
うして、どうやってここまで来たのかも。
ここにはなにもない。時間も、音も、体も体温も天気も、
あらゆる液体もなにも。なにもない。時間も。夜も、朝
も、ひかりと影も。それなのに、強烈に自分だけがある。
わかっていた。やっぱり海には出られないのだし、舟になることもできない。陸にいたって風を捕まえられないし、かといって待つひとになれるわけでもない。歩くのには寒すぎる。さっきスーパーマーケットの前で若い男女が重なり合って凍っていた。ぜんぜん美しくなかった。それは世界じゃない。世界はこの外にはない。わかっていた。だれかと同じ世界では生きられない。誰も、誰かのことを理解することはできない。それぞれはただそれぞれに存在していて、その無価値性だけが真実に尊い。わたしは、自分を好きでいるためにしか他者を好きにならない。きりんがぞうのために泣くのだとしても、わたしにはできない。わかっている。それなのに、また前のめりに、人を好きになってしまう。
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