耳のない魚/月乃助
は、ただのヤマメじゃ 」
老女は、小箱をひきよせ しわくちゃの札に灯をともす
みるみる
福沢諭吉が、焼かれていく
それで、
タバコに火をつけ 紫煙をゆっくり 刷いた
燃えるのは、確かに紙
それが、本性という
価値をもたらすものは、縁という力・・・・・・・・
私は、その対価の玄米のKgや
支払いをもとめられる 光熱費を
それで救われる ユニセフのやせた子供たちの
明日の食を想う
婆さまは、私をながめ
みつめ
つぎに新渡戸稲造の札を火にくべた
「 わかったから もう、わかったから やめれ 」
拓くのではなく
五感をとじ やさしく
やってくる すがたを想う
容をもたぬ水の 無色の 文字
私は、それで詩を
書いてみる
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