No Country/そらの珊瑚
風が
やすやすと
国境を越えて
やってくる
クリスマス寒波に
背中を丸めて帰りを急ぐ人の
ひとりにひとつ用意された家路をたどれば
夜に沈んだ土地に
ぽつり、ぽつりと
灯りがともされれば
人がいとなむ家がそこにあることを知る
あのひとつひとつが
国だったらいいのに
おしょうゆ、きらしちゃって、と
おとなりさんに
借りにゆく気軽さで
人も
国境を越えていければいいのに
風が
渡り鳥を連れてくる
春になれば
彼らが自らの体温を使って
温めた卵から
命が生まれるだろう
その翼は
かるがると
国境を越えていく
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