ポプラの木/服部 剛
土曜日の夜
賑わうレストランの
窓越しに一本のポプラが
誰にも気づかれず
静かなものごしで
あるべき場所に立っている
時折吹く夜風に
大きい緑の葉を揺らしながら
今迄にどれほどの人間模様を
みつめたのだろう
窓越しのレストランの中で
食事をする人々の日々を彩る
笑いと涙を
人生や夢について語らう青年達
報われぬ恋に唇を噛む若い女
転寝(うたたね)の間に亡き人を夢見る老婆
この街で繰り広げられる数々の物語
今夜もレストランの窓越しには
人知れぬ秘密を知る静けさで
ポプラは独り立っている
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