朝と夜の姉妹戦争/高原漣
弦月に照らされて薄い影をおとす
ウェンドリンはクラン・マクラハンはるか沖にたゆたう大戦艦が二隻
浮かべるはくろがねの城
それは曙光さす姫君と宵闇にあそぶ姫君の居城
鈍色の大砲が空をにらみ
無数の機銃でその身を覆い
黒光りする装甲でくまなく身をかためたそれは
はてしなく続く王統の血脈に連なる姉妹が
血を吐き涙を流しながら続ける闘争の象徴であり
呪いとも言うべき力の戯画にして国の誉れ。
冷たい海面に航跡を曳きながら
ゆっくりと歩く速さで航行を続ける大戦艦
砲門を互いにさし向けながら
巴を描き続ける姉妹たちの居城
夜が明けなければ決して朝は来ない
砲火を交えることなく回り続ける彼女たちに
まだ朝は来ない
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