The Tale of Bear/そらの珊瑚
森の中に『くまカフェ』がある。とんがり屋根の丸太小屋。夏にはハーブが咲き乱れた庭も、今ではすっかり刈り取られて、来年の春を待っている。
店主のシャルロットが開店準備を終えて、窓のカーテンを開ける。採らずにおいた柿の実をいつもならツグミがついばんでいるのに、今日は静かだった。「渡りが始まったのかしら? だいぶ寒くなったものね」シャルロットは暖炉に薪をくべながら冬がそこまで来ていることを感じていた。
カランカラン。鳴き木(なきぼく)で作ったドアベルが鳴る。今日最初の客はヤンじいさんだった。
「おはよう、シャルロット。いつものをお願いするよ」
「おはよう、ヤン。」
ヤンはミルク
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