月の嗤うさき ー第二稿 /……とある蛙
 
程度で
表皮の厚くなった自分には何の痛痒も感じなかった。

藪の中で森の外の様子を窺う
山を下る道は舗装され
自動車の走行には向いていたが、
裸足の足には痛そうだ。
しかし類人猿は歩き出す
自分は歩き出す
足取りは軽いが気は重い

月の青々とした光を背後から浴び
幾分猫背ながら威圧感のある影を地上に落としていた。
月は彼を急かす
月は彼を動かす
月は彼を狂わす。


    5

類人猿は歩きながら
歩きながら
空腹を覚え
傍らの虫を食う
傍らの虫を食らいながら
道を見る
道はゆっくりカーブし森の陰に行き
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