床屋にて /服部 剛
鏡の前の
リクライニングに座り
鋏を手にしたおじさんに
全てをまかせて、瞳を閉じる
ぱさ、ぱさ、と切り落とし
頭はだんだん軽くなる
ぱさ、ぱさ、と切り落とし
心はだんだん軽くなる
リクライニングの傍らで
蟹の姿の床屋さん
鋏は自分の手のように
ぱさりぱさり・・・と
日々の邪念を、切り落とす
いつしか僕の心眼の
暗闇にゆらゆらり・・・
舞い散る枯葉
「兄ちゃん、起きて!」
はっと目覚めた鏡に映る
生まれ変わった僕の頭は
思いの他に
○い姿になっていた
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