オマージュ?/Giton
 
つまり、単なる日記だった。したがって、啄木や子規のように手法を磨いて洗練しようという考えさえもなかったのだ。
やがて、溢れる‘詩情’が定型の枠におさまりきらずに自由詩形をとったとき、彼は、
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「これは詩ではない。私は科学者として心象を記録しているのだ。心象のごく粗いスケッチに過ぎない。」
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と、人に対して説明した。
これを、単なる謙遜だと思うならば、賢治の本意を取り損なうことになる。彼は、
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「私の記録したものを、詩などという“いままでのつぎはぎしたもの”☆といっしょにしないでほしい」
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とまで言っているのだ。
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☆(注) 岩波茂雄宛て書簡、1
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