オマージュ?/Giton
ことで言えば、
第1楽章の初め、木管がテーマを奏でたあとで、最初のオーケストレーションの盛り上がりの箇所* では、いつも圧倒的な“自然”の力を感じないではいられない。指揮者によって、そこに多少の迫力の違いがあるのは否めないが、ともかく作曲者の圧倒的な意図があったことはたしかだ。いつもは森の奥や沼蔭に身をひそめ、決して人々の前に現れることのない‘自然’は、いまや決然と懐を開いて、孤独な散歩者に対し、己が裸身をかいま見せようとするかのようだ。
私のような者でさえ、あの部分をウォークマンで聴きながら、たまたまブナ林の白い斑らの樹幹に出会いなどすれば、王侯のように気高い森の息吹きが吹き付けて来るのだ。
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