オマージュ ?/Giton
 
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‘のはらの果てはシベリヤの天末’
 その遠いけぶった海原から
 意識を失った帆影のように
 異郷の文字列は削られ吹き寄せてくる
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 地は舞い上がり白い靄と化した
 その天空へ 汽笛は突き進む
‘今宵鶯宿(あうじゅく)はなほ雪降るらし’
 あなたの屍体の上に あなたの原稿用紙のうえに
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 ざっくりと降りしきった翌あさ 
 小さな六角形の塵 透明な結晶粒
 すっかり融けてくずれたセルロースとカルボンは
 犯された少年の眼のように煌めいて
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 もはや何も伝え得ないまでに叫び…叫び…
 叫んで往き過ぎる 夜のあかり
 真午の蝕
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 そしてあなたはもどかしそうにこちらを見ている
 正午の蝕
 吹雪(フキ)にかき消えて
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