婆ノ衣/服部 剛
「焼ぁ〜き芋ぉ〜、
石焼ぁ〜き芋、焼芋ぉ〜」
日も暮れた
裸木の並ぶ川沿いの道を
赤ちょうちんの焼芋屋が
ゆっくり ゆっくり 歩いてく
後ろからもんぺの懐(ふところ)に
じゃらじゃらと小銭を鳴らし
小躍りする少女はポンコツ車を追いかける
( あれはきっと
こたつで足をあっためあった
婆ちゃんとみかんの皮をむきながら
「買っといで」とわたされたんだろう )
すてん! ちゃりんちゃりん ・・・
夜道の小石につまずいて
金と銀の丸い滴は転がり落ち
暗い川面(かわも)に輪がつらなった
少女のひざに 血の花が
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