キャラメル色のアパート/市崎 柚
少しきしむ階段をのぼれば きみの部屋
端から二番目…
ミントの煙草の匂いをまとった 気まぐれな人だった
手を離すと どこかへ いつのまにか
消えてしまいそうで
いつも そんな気がして
僕は内心 不安だった
淋しい僕たちに 幻の春がきて夏が過ぎ
いつだかの冬が寄り添うころ
きみは消えた
あの淡雪のような町から 僕の空から…
さよなら とだけ書いた小さなメモと
僕の詩のノートだけ残して
さよならだけが永遠に続くだけ
僕の記憶の森に佇んだままの
古びたキャラメル色のアパートの屋根に
そおっと 雪が降り積もるだけ
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