かさぶた/涙(ルイ)
ては覚えていった
要するにあれと同じようなことなのです
経験してしまったんだもの
強く強く刻みこまれてしまったんだもの
忘れろと云われることのほうが無理な相談というものなのです
殴られた記憶が いまの私を殴りたおす
蹴り上げられた記憶が いまの私を蹴り散らす
酷い言葉が いまの私の存在を脅かす
もう十分でしょ 十分苦しんだでしょ
その重い足かせ そろそろ外してもいい頃よ
あの頃の痛みを思い出してつらいんじゃない
記憶の刃先が切り付けるのは
まぎれもなく今現在のわたし
まったく何かの罰かなにかのように
自分を痛めつけることに熱中していたので
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