宝籤/はるな
れていて、格好良い犬になりそうねと母が言う。信じられないくらいの軽やかさで駆けまわるときは、目で追えないほどだ。
宝籤は知っているだろうか。海とか、空とかが、想像ではなくて実際に存在していること。どのような草にも根というものがあって、永遠には青くいないこと。宝籤が、生まれてきて、死ぬこと。自分がどれだけ愛らしくて、ユニークな存在であるかを。宝籤の尻尾に、まちがいみたいにわずかに白い毛があることを。このうちに来てから、たぶん死ぬまで、ずっと。
まずはじめは、愛されていないと思っていた。愛がなにかも知らないで。
そして今は、それが存在することを知っている。それがいったい何なのかを、知らないまま。
戻る 編 削 Point(0)