宝籤/はるな
 



おもえば部屋には、いつも鏡がなかった。灰色で、四角く、わたしはだんだん大きくなった。頬の肉がすこしずつなくなっていって、そのぶん腰がほんのりと厚くなった。
だれも部屋にはいれていない。わたしはいつも出かけて行った。望むと望まざるにかかわらず。わたしは自分の足で歩くことができたし、自分の目でえらぶことができた。さわることができたし、捨てることもできた。抱きしめることもできるのだということに気付いたのは、ずっとあとになってからだ。そして、気づいた今でも、だけどどういうふうにやればいいのか理解しきってはいない。

愛は、だんだんとあらわれはじめた。
部屋のそとにだ。
それが存在して
[次のページ]
戻る   Point(0)