『赤い快楽』/あおい満月
わたしはうまれるまえの
かたまりの内側に潜んでいた
ある日溶岩とともに かたまりが溶けて
わたしが流れ出た
海が生まれた
空には赤い夜の太陽が
花開きながら飛び散っていた
わたしは赤い快楽から
こうして生まれたことを忘れて
自転車で転んで擦りむいて
久々にわたしから咲き始めた彼に向かって号泣した
彼は生ぬるく
わたしの肩を包んだ
あれは、
流れる血潮への挨拶だったのか
今はわたしは
わたしから彼が流れても
泣きはしない
寧ろ舌先で
その体温を愛でる
わたしのなかで、
今でもたくさんの子どもが
赤い太
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