アリアドネ/
多紀
アリアドネは悟った
彼はもうこの迷宮から
二度と帰ってこない
「きっと、君のところに戻ってくるよ」
そう言った貴方の瞳の
絶望の色
私は気付きました
貴方は帰ってこない
貴方は世界を放棄した
そしてその瞬間私は
見棄てられたのだと
貴方は迷宮の中へ
旅立ったのだ
この世界の重荷から
開放されるため
自分自身さえ
放棄するため
彼は迷宮の中で
怪物と戦ったのか
そして喰われたのか
いいえ
彼自身が怪物と
なってしまったのか
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