動機/Seia
むしゃくしゃしていた。
ただそれだけだった。
コップをカフェのガラス窓に投げつけたのも、
彼岸花の根本を掘り返したのも、
アリの巣穴にネギ油を流し込んだのも、
むしゃくしゃしていた。
ただそれだけだった。
トイレの裸電球を握りつぶしたのも
学生食堂でトレイを次々にフリスビーしたのも、
どくだみをすりつぶして飲んだのも、
むしゃくしゃしていた。
ただそれだけだった。
誰かが傷ついても、自分が傷ついても、
モノが壊れても、コトが過ぎても、ココロを失っても、
世界が終わっても、
むしゃくしゃしていた。
ただそれだけだった。
ただそれだけでよかった。
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