動機/Seia
 
むしゃくしゃしていた。


ただそれだけだった。


コップをカフェのガラス窓に投げつけたのも、

彼岸花の根本を掘り返したのも、

アリの巣穴にネギ油を流し込んだのも、


むしゃくしゃしていた。


ただそれだけだった。


トイレの裸電球を握りつぶしたのも

学生食堂でトレイを次々にフリスビーしたのも、

どくだみをすりつぶして飲んだのも、


むしゃくしゃしていた。


ただそれだけだった。


誰かが傷ついても、自分が傷ついても、
モノが壊れても、コトが過ぎても、ココロを失っても、
世界が終わっても、


むしゃくしゃしていた。


ただそれだけだった。


ただそれだけでよかった。

戻る   Point(2)