褥焼き/月乃助
 

 貧欲に 死の秘密がしりたくて
私は、そこに身をよこたえる
さめやらぬ 死者のぬくもりらしきものが残っている


 声をきけば
深山の川瀬が口をひらいた 
流れの往きつく先の 潮の味をしってみたいと


老婦の高笑い


 川は、海 は、一如
川の往きつく先は、海 おまえは、海の一部にしかすぎないと、


 別け隔てなど ありようもない
生も死もおなじ ひとつに違いないのですね
流されまいと執着し とどまろうとしようと
時は、ゆるさず


 使い古した布団に灯油をかけ 火をともす
死を 穢れと恐れるでなく 燃やす
それは、きっと老婦のからだのいちぶ
ともに旅たつ


 燃えさかる 炎の熱にやかれ
嘆きをすてる



白煙は、いつか谷あいをみたしていた 




 漂うのは、
山の気に染まり 森に憩う
それは、自由をえた魂らしかった






}









戻る   Point(7)