褥焼き/月乃助
{引用=
男士たちが
屏風をもってきた
眠る女の 枕元にさかさのそれは、
薄の天に 雁が地を飛び去っていく
踏み絵さながら 鏡のおもてに裸足をのせる
足元をみつめれば むこうに
確かにもう一つの 逆立つ下界があった
あの世とは そんなものらしかった
老婦との別れに 里人はつどう
たわわに生った実を 人によらず さしだす
果樹のような 人でした
私もまた、口にし 種を心にやどした
いま一つ ここより命が消えた
通夜のさきは 褥焼きがのこされる
老婦の眠っていた寝具を 焼く
川原に運んだそれをするのは、守人の私のつとめという
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