インド人 吉田 (後)/salco
道がいさ
さかの活況を呈したのは、仕事帰りの女性達が迂回路としたからであった。
しかし台風だろうと大雪だろうと微動だにせず立っている。
傘がダメなら使い捨てカイロはどうか。と妻に問えば、日本のオフィサー
は物質的ねぎらいは一切受けぬ決まりなのだから、彼を煩わせてはいけない
と諌められた。では急をもよおした場合はどうするのだと訊けば、そのよう
にルーズな自己管理はしていない筈だが、腰の無線で交代を呼ぶのだろう、
と。職務とはいえ気の毒で落ち着かず、ちょっとした夫婦喧嘩も憚られて正
直、ストレスではあった。
あっという間に過ぎ去った、しかし二十七年は長い歳月である。
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