インド人 吉田  (後)/salco
 
わなかった。ただ地下ガレ
ージの勾配には驚いたようだ。帰ってから義姉に「かわいそうに、あいつは
家で追突事故に注意を払っている」とこぼしたそうだ。

 このように三歩で庭が尽きる建売りであれ、今に至るも大きな修繕を要し
ていない。南欧風屋根瓦に燦然とBSアンテナがそそり立つ横には、緑青も
ゆかしい鋳鉄の風見鶏が真東にくちばしを向けている。

 短日に終ったとある政権下では隣のおじいさんが閣僚となり、一夜にして
その門前に警官の詰め所ができた。
 スツールもない素通し便所のような小屋はバッキンガムパレスの衛兵がい
るようで、半年間は空き巣の心配をせずに済んだものだ。畑中の夜道が
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