母の声/
服部 剛
両手をそっと前に組み
瞳を閉じる少女は
窓から射す日に照らされた母が
膝の上に開いた本の言葉を
じっと、聴く――
*
数十年後、大人になった彼女は
街中のとあるCafeで腰を下ろし
珈琲カップを手にした時
ふいに、聴く――
長い時を経て
今も傍らにいるような
あの日の母の肉声を
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