インド人 吉田 (前)/salco
以下の衆生に関心を払う理由はなかった。前者は邸内の下働きとし
て、後者は目に触れぬ戸外で分をわきまえるべき、どちらも賤奴に過ぎな
い。五階層の世界は、「わたしの床はあなたの天井」構造ではないのだっ
た。
灼熱の地面を裸足で帰って行く、痩せこけた男女の姿は幼いアッサンタ
ーリの胸に強い悲哀を残した。そうやって生きて行くしかないのだと知っ
てからは尚更だ。
前世の悪業を負い、汚物や死体を扱う生業を定められた彼らがそこから
脱する道はない。下位カーストと違い、篤信と引換えに来世でのましな境
涯が叶えられる死後転生もない。未来永劫、子孫も疎外と蹂躙を生きる。
自身を「ダリット(破壊
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