父のラジカセ/小川 葉
昔、秋田の実家を出て、仙台で暮らしはじめた時に、父が大切にしていたラジカセを、私にくれた。
私は、父のラジカセを、しばらく使っていたけれど、CDプレイヤーもついてなかったので、時代の流れと共に使わなくなった。
やがて埃をかぶってしまったそれを、引っ越しの時、もう使わないし、邪魔だったので、処分することにした。
それから十数年経った、ある帰省した時の正月休み、酒がまわった上機嫌な父が、あのラジカセまだ使ってるか?と、不意に私に聞いた。
CDもついてないし、あれは時代遅れだから、捨てちゃったよ、と笑うと、父はすごくさみしい顔をした。
モノは思い出ではないけれど、思い出の背景に、モ
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