光冨郁也詩集『バード・シリーズ』あとがき/葉leaf
 
る。透明な液が私に流れている。(『海の上のベッド』より)

 何気ない日々の暮らしの中で、時折、事象を感受する能力が高まることがある。意識に一種の力がみなぎり、あらゆる事象との接続が容易に感じられることがある。まるで意識が輝く水、すべてをあまねく満たす水になったかのように。あらゆる事象は元来とても鋭いものであるが、その鋭さを鈍らせることなく直接に受け入れる状態。そのような状態において、世界は世界から剥離する。より人間に近い位置へ、より光と痛みに満ちた高度へと剥離する。
 光冨は、そのような剥離した、より鋭い世界の中で、常に何かと調和することを忘れない呼吸をする。吸気とともに光や形、音などが受
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