日曜日の夜/はるな
けては、残りはあげるね、と一口でこちらへ寄越してきて、それでいてもう一口ちょうだい、とわたしの手元へ口を寄せてくる。それが、たまらなく、うれしかった。いつも。
風流というか、江戸っ子のようなひとで、和服がよく似合ったし、季節の催しがなんでも好きだった。初鰹とかお月見とか。食べものが好きだったのかもしれない。でもわたしは、彼を前にするとちっとも食べられなくて、それでいつも彼をつまらながらせた。
今ごろ、だから、昨日かきょうか、それともおととい、新しいワインを開けているだろう。どこかで。誰かと。きっと一人ではないだろうな、と思う。
果物みたいな、牛肉みたいな、新芽みたいな、良い匂いのするひと
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