夢のつづき /服部 剛
 
19年前にお線香をあげた 
尾崎豊さんの実家に行ったら 
雨戸と鍵が閉まっており 
古い家はひっそりと沈黙していた 

「せっかく遠くから来たのにねぇ 
 ゆたちゃんのお父さんはご高齢で 
 今はいないみたいなのよ・・・ 」 

「僕が思春期の頃に来た時は 
 力強い握手をしてくれたけど 
 ずいぶん時も流れましたね・・・」 

近所のおばちゃんと話した後 
ひと時家を眺める内に 
いつしかとっぷり陽も暮れて 
人気(ひとけ)無い道に佇み 
玄関のドアを開いた  
在りし日の青年を思いながら 
懐かしい歌をぼくは、口ずさむ 

「シェリー、俺は歌う―
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